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【新小説】visual~初めて抱く印象~ 【ネット小説】

「あのね、別に子ども作っちゃいけないって

言ってるわけじゃないのよ?」

美智子は言う。

(何でこんなこと言われなきゃいけないの?)

「まさか、作る気あるんじゃないわよね?」

佳央莉に詰め寄り、顔を寄せる。

「・・・ありません。」

「なら、いいんだけど。」

「それなら、これから頑張ってね。

何かあったら遠慮なく相談してね。」

佳央莉を残して美智子はそう言って部屋を出ていった。

 

【visual】ビジュアル。見た目。

目に見えるさま。視覚的なさま。

そうした場合、視覚的に物事をどう捉えていくのか。

それは、どこまで本当にその本質を捉えることができ

理解できていることが可能なのだろうか。

 

 

「新しく面接に来た人、すごい綺麗な人だね。」

事務室がざわつく。

美智子は、廊下をすれ違う彼女を見た。

とても華やかな人だな、という印象だった。

【華】がある。そんな印象。

美智子はため息をついた。

 

美智子は子どもが3人いる。

子どもは、みんな自立し、独立もした。

今は夫婦二人暮らしだ。

主人である陽介は、大学の教授をしていた。

もう定年を迎え、陽介は家計の為とアルバイトを始めた。

公民館の事務の仕事だった。

美智子は塾の事務の仕事をしていた。

陽介とは歳が15歳離れていた。

美智子は今50歳。陽介は65歳。

夫婦でそれなりに暮らしている。

不自由もしていないけれど、【幸せ】かと聞かれれば

【普通】なのだろう、と美智子は思う。

 

「実は、先週妊娠のお話をさせてもらっていたと思います。」

佳央莉と祥は産婦人科へ来ていた。

先週、産婦人科を訪れ、妊娠5週目だと言われた。

初めての妊娠で、二人とも泪が出るほど喜んだ。

不妊治療を始めようか、と話していた時だった。

結婚して5年。佳央莉は38歳。妊娠はほぼ諦めていた。

医師は続ける。

「それが、赤ちゃんのお部屋ではなく、腫瘍でした。」

二人とも言葉をなくした。

(え?赤ちゃんは?)

「赤ちゃんは?」

祥が医師に尋ねる。

「妊娠はされていませんでした。」

「そうですか。」

「腫瘍についてですが、詳しい検査を・・。」

そんな話など入ってこなかった。

(妊娠してなかった)

この現実。

妊娠して、ママになることが夢だった。

ようやく叶い、いろいろ頭の中で膨らませてた。

(そっか。)

「また、次あるよ。」

祥が佳央莉の頭をなでる。

「そうだね。」

「大丈夫、最後じゃない!」

祥の言葉は心強かったけれど、今の佳央莉には

少しだけ届かなかった。

(きっと祥も同じ)佳央莉は想う。

「職場に言わなきゃ。妊娠したかもって言ったから。」

「そうだね。」

「明日、言うよ。」

車がショッピングセンターを過ぎる。

(数日前来たな。子ども服見に)

佳央莉は思い出した。

 

「そうですか。」

理事長は言葉に詰まっていた。

「身体が一番心配です。無理はしないようにしてください。」

「あの・・・」

佳央莉は、言葉に詰まる。

「働くことに少し自信がありません。」

「私は、時間がかかっても働いて欲しいと思います。

あなたには向いている。そう思っています。」

その言葉は、とても力強かった。

 

佳央莉は塾の講師をしていた。

受け持ちの生徒もいた。

今、【子ども】と向き合うことは正直辛かった。

反面、今向き合うべきだとも思っていた。

だからこそ、理事の背中を押してくれる言葉は嬉しくもあった。

 

「事務の者が来ます。詳しいことは、そちらに聞いてください。」

そう言い残し、教室を後にした。

 

一人で待っていると、美智子が入ってきた。

(事務の人?)

「お待たせしました。川口です。」

「初めまして。真鍋です。」

「あら、初めてましてじゃないわよ。」

(え?会ったことあった?)

「申し訳ございません。」

「それはいいんだけど、続けるの?仕事?」

(え?)

「理事長に何か言われた?あの人引き留めるの得意だから(笑)。」

「そういうわけではないです。理事長は何も言われてないです。」

(この人何が言いたいの?続けたらいけないの?)

(初めて話したけど、意外ね)

「いろいろ聞きたいことがあるんだけど・・」

「何ですか?」

その目は美智子から目を逸らすことはなかった。

真っすぐにこちらを見る。逃げずに。

「身体は大丈夫なの?働けるの?」

「薬とかは飲んでないの?」

「ご主人、お仕事は?」

「貯蓄はないの?」

怒涛のような質問攻めだ。

けれど、佳央莉はどれにも答える。ひとつひとつ。

曖昧になどしない。言葉を選び、正確に伝えてくる。

目を逸らすことなく、真っすぐな瞳はもっと強くなる。

(真鍋佳央莉か)

美智子は想う。

「何かあったら相談して。話を聞くから。」

「ありがとうございます。」

(なんだろう、この違和感)

佳央莉は感じる。

不穏な空気と違和感しか感じなかった。

【川口美智子】という人物がどういう人なのか。

その時は、美智子のコトバたちに飲み込まれ見失っていた。

 

ただ、【川口美智子】との距離は遠い。

分からない。

 

それが【初めての印象】だった。

 

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