ナツのsorary

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visual ゼロから始まれば 【ネット小説】

佳央莉は美智子の言葉を思い出す。ゆっくりと。時間をかけて。

思い出す、というより【蘇る】記憶。

【美智子】の言葉は何だったのか。

何を意味したのか。

佳央莉は、考えれば考えるほど分からなかった。

初めて会った人に言う言葉だろうか。

(いいや、あたしならそんなこと言わないし、言葉を考える)

仕事、行きづらいな。

あの人に会いづらいな。

でも、誰にも言えない。

佳央莉はただ、帰り路をひとり歩いていた。

 

佳央莉のあの真っすぐな瞳が気に入らなかった。

言葉を選びながら話すところも腹立たしくさせた。

「子どもを作るなって言ってるんじゃないのよ?」

あの言葉。

「はい。」「分かっています。」あの場ではそう言わせるしかない。

あの場ではそうとしか何も言えないだろう。

 

美智子は【普通】に生きてきたかもしれない。

けれど、大学教授の旦那を手に入れたことで

今までの【普通】から抜け出せた気がした。

子どもにも3人恵まれ、家も立て、子どもも有名大学へ進学した。

大きな企業へも就職した。

美智子はバイオリンが得意だったので、音楽教師として

勤めていたこともあった。音楽教室の先生もした。

傍から見れば、羨ましい【家族】であり【奥様】だったであろう。

歳を重ねていく中で、やはり若さは失われていく。身に染みる。

見た目も【普通】なのかもしれない。

歳を重ね、その【普通】が

自分の中で【普通】ではなくなってきた気がしていた。

 

【アンチエイジング】検索をかける。

【ダイエット方法 自宅 食事】検索。

(もう、なんかいろいろ遅いかな)

テーブルに腕をのせ、顔をのせて、ため息をつく。

手鏡を取り、顔を見ようとしたが、やめた。

想像がつく。

(きっとひどい顔をしてる)

溜息をつく。

(晩御飯準備しなきゃ)

椅子から立ち上がり、キッチンへ向かった。

 

「佳央莉さ、また暗いじゃん。もうそういう顔嫌なんだけど。」

「ごめん・・。」

祥がイライラしている。

分からなくもない。

一緒にいて楽しくはないだろう、と佳央莉は思う。

(今日言われたことなんて言えないな)

「俺、今日上に寝るよ。一緒に寝ても嫌だから。」

祥ははっきりものを言う。それだけにその言葉はきつい。

「いいよ。分かった。」

佳央莉は寝室へ一人で向かった。

 

祥はいつも【元気】を求めてくる。

多分、それは【笑顔】のこと。

でも、いつも【笑顔】でいることは【いつも】は難しい。

そのことで祥とはよく喧嘩する。

(また、考え事が顔に出てしまったか)

布団に入り、佳央莉は顔まで布団をかぶった。

(そんな祥も【笑顔】ない時あるのにな)

布団から顔を出した。

(それは【あたしのせい】か)

いつの間にか佳央莉は眠りについていた。

 

「元気にしてる?」

はつらつとした聞き覚えのある声。

着信は誰からか分からなかった。

「あたしだよ。忘れた?」

(あー・・)

「何で番号分かった?」

「そんなのいいじゃん!ていうか元気?」

その声は、沙耶だった。

沙耶とは2年くらい付き合ってた。

沙耶はよく笑う子だった。怒るし、泣く子でもあった。

女子からはいい評判は聞かなかった。

けれど、俺は沙耶が好きだったし

守りたいとさえ思っていた。

なぜ、女子にあまりよく思われていなかったのか

俺にはよく分からないけれど。

いつも「祥のためにね!」というのが口癖だった。

いつも俺に一生懸命だった。

だからしんどくなったのかもしれない。

好きなことへも気づくのが遅かったのかもしれない。

別れてすぐ別の男ができたと知った時は

苛立ちでどうかなりそうだった。

俺はモテないわけじゃないと思う。

女性との付き合いは割合ある方だ。

 

嫉妬なのか他の男と自分を比べたのか。

それは分からない。初めての感情だった。

【執着】に似たもの。

 

「それでさ、今度会えたらなって思って。」

「そうか。」

俺は、それ以上の言葉が出てこなかった。

 

佳央莉はいつも【期待】される。

それは【過度の期待】。

何故なのかは分からない。

だから余計後から辛くもなる。一人で抱えてしまう。

だったら、初めから【ゼロ】にすればいい。

佳央莉はそう思うのだった。

 

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